約 1,977,390 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2035.html
入り口にあった松明に火をつけ、タバサたちは鍾乳洞の中を進む。 先導していたミノタウロスが部屋のように開けた場所で立ち止まる。 そこには机、椅子、炭などの生活用品だけではなく、 秘薬のつめられた瓶や袋、マンドラゴラの苗床や奇妙な道具などが整理されておかれていた。 棚には奇妙な人形や仮面、鉱石、そしていくつか本が並んでいる。 「粗末な物しかないが、座りたまえ」 腰掛けたタバサが男に問いかける。 「あなた、何者?」 「ラルカスという。元は、いや今もだが貴族だ、十年前にミノタウロスを倒した」 「その格好は?」 「ああ、気になるだろうな…端的に言えば、禁忌である脳移植を行なったのさ、 人間の体、そして不治の病と引き換えにこの恐ろしいほどの生命力を持つミノタウロスの体を手に入れた」 「それで、魔法が使えるし、言葉も通じるのね!」 シルフィードがワムウの後ろから口をはさむ。 「その通りだ、しかし魔法が使える、といっても人間のときとは比べ物にならないね。 人間のときもかなりの腕の水と火のメイジだと自負していたが、今やスクウェア以上の腕はあるのではないか、と思う。 もっとも、比べる相手がいない以上本当のところはわからぬがな」 ラルカスは口の端を歪める。 「寂しくはないのね?」 シルフィードが質問する。 「もともと独り身だ、絶縁こそされなかったが事実上ただの放蕩貴族、洞窟だろうと大して変わらぬ」 「でも、おいしいもの食べられなさそうなのね、お肉はちゃんと食べてるのね?」 ラルカスの口が数秒止まるが、慌てた様に話しを始める。 「……出たところの森で生き物ならいくらでもとれる、火も見ての通りあるしな」 「その森の生き物に人間の子供を食う奴がいるのか?」 唐突にワムウが話を変えたので、ラルカスは首をかしげながら答える。 「オーク鬼だっているし探せば剣牙虎くらいはいるかもしれんが、それがどうした?」 「質問を変えるか、ここの入り口に埋まっていた人間の骨は、誰の食べ残しだ?」 場が静まる。 「そ、それは本当なのね!?」 タバサは杖を構え、椅子から立ち上がる。 険しい顔になったラルカスが声をだす。 「……あれはこのあたりに住むサルの骨だ」 「そうか、化け物なら化け物らしく残さず食えばよかったものを」 ワムウがワンステップで飛び掛かり、ミノタウロスを思いっきり蹴りあげる。 「待つんだ、話を聞いてくれ」 「俺は戦いに飢えている、戦う理由ができたというのに話し合う戦士がどこにいる。 嘘ならもう少しまともな嘘をつくんだな、もっともそれでも俺が聞く保証はないがな」 杖を抜いたラルカスが放つ水の弾をいなし、もう一度胴体を蹴りあげると、堅い皮膚は破れ、肉体が露出する。 露出した胴体をワムウは一部食い、既にラルカスは致命傷のようだった。 「なんだ、この程度か。わざわざ遠出したというのに手応えがないな」 ぶつぶつと回復魔法を唱えるが、ほとんど傷はふさがらない。 小さな声でもごもごと話す。 「…二男として生まれ、不治の病に侵され、放蕩し、俺を超える化け物に殺されるのか」 「貴様ごとき化け物ではないな、所詮人間だ」 「そうか、俺は人間か、ならば悲劇だろうか、この俺の人生は」 「そんなことはあの世で決めろ、お前の身の上話に付き合っている暇はない」 「喜劇は無理でも、英雄談、くらいはめざせるかもしれんな」 「人間にしては強いかもしれんが、メイジとしては二流以下だな。狩りに慣れても実戦でそれを生かすのには長い時間がかかる」 「……俺は人間を超えたかったのだ、このまま死ねん、このまま悲劇では終わらせん」 右手が棚にあったある物をつかむ。 ワムウが驚く。 「なぜ、そんなものがここにあるのだ!」 ラルカスは血まみれの手で、それを顔にかざす。 「俺は人間を超越する!」 石仮面は、ラルカスの顔で輝いた。 「な、なんなのねあれ!」 「あれは石仮面」 「知っているのお姉様!?」 場が静まる。 「そ、それは本当なのね!?」 タバサは杖を構え、椅子から立ち上がる。 『石仮面』とは 非常に堅い石でできており、古来では鈍器として使われていたという説もある。 いつごろからハルケギニアにあったかは不明で、現在はロマリア皇国が数個保持しているいわれているが、 教皇はそれを否定しており、機密情報とされている。ただし確認された事例として、使い魔召還の儀式で 召還されてきた、鎮魂歌の洞窟などで拾えた、宝箱に入っていた、円盤の入った容器と一緒に届いた、などの報告がある。 これを被った生き物は、恐ろしい生物に生まれ変われるといい、その化け物は、首だけでも生きていられる、何十年何百年も 海の底で暮らせる、ひからびても血を浴びせるだけで蘇る、相手の血を飲み干した場合は、相手の魂を取り込むことができる、 ジェットエンジンをつけて空を飛んだ、女性型アンドロイドを従える、幻想郷を霧で覆うなど数多くの伝説を残しており、 人々から長い間恐れられてきた。始祖ブリミルは恐ろしいこの怪物を倒すために四人もの使い魔を従えたという説もあり、 しかもその内ガンダールヴ以外の伝説の使い魔の死因はこの化け物によるものである、という伝説もゲルマニア東部には 根強く残っており、宗教研究家の間ではこの化け物とはエルフを指している、という説が有力である。 (出典 ブリミル書林刊「豪華哀鈴」より) 「カーズ様の作った石仮面はこんなところにまで広がっていたのか」 「きゅい!?カーズ様って誰なのね?」 「話はあとだ、あの堅い皮膚に再生能力をもたれるとなると、かなり楽しめそうだな」 仮面がラルカスから落ちる。 すでに腹部の傷は再生しきっていた。 ワムウは飛び掛かろうとし、ワンステップで高く跳躍する。 ワムウは、突然現れた人形に空中で殴り飛ばされる。 屈強な体つきで、そして頭部にハートのマークがある。 着地したワムウが呟く。 「スタンド、とやらか」 「ほう、ご存じか。その通りだ。先ほどはあまりのスピードで身を守る暇もなかったが、今は別だ。 力に、精神力に、動体視力に、体力に、全てに満ちあふれている。素晴らしいぞ、この体は!」 杖を振ってでてきた、水が鍾乳石を切り裂く。 「どうだ、この魔法は。ミノタウロスのときですら、俺は水の魔法について勘違いをしていた。 水の本質は治療でも洗脳でもない、ダイヤモンドすら切り裂く圧倒的圧力だ!」 ラルカスはスタンドを従え、杖をこちらに振るう。 鍾乳洞と、ワムウの皮膚が切れる。 ワムウの顔色が、変わった。 杖を構え、ワムウたちに向き合う。 「スタンドの名を名乗ろう、クレイジー・ダイヤモンドだ」 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/232.html
ズキュウウウウウウウウウウウウウウウン 鉄塔から凝縮された破壊のエネルギーが発射される。 圧倒的なエネルギーの奔流は渦を巻きフーケとそのゴーレムに襲い掛かる 「ひっ・・・」 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!! 先ほどとまったく同じ爆発がフーケを包み込む。 「アラヤダーーーーーーーー!!!!」 ゴーレムは粉々に消し飛びフーケはきれいに吹っ飛んで星になった。キランという効果音つきで。 「あなたの敗因はただ一つ・・・あなたは私を侮辱した」 ビシ、とポーズを決めルイズは空を見上げる。 屋根は完全に崩壊し空に浮かぶ二つの月が煌々と辺りを照らす。 月の光を浴びる錆びた鉄塔はちょっとした絵画のようだった。 「ふ・・・ふふ・・・なんか悪くないわね、こいつ」 フーケを撃退したルイズはいたくこの鉄塔を気に入った。 そうだとも、閉じ込められて最悪の気分だったがこの鉄塔は悪くない、悪くないのだ。 破壊の杖の魔法すらはね返すこいつはある意味最強の盾だ。どんな外敵も恐れる必要はない。 床を整備すれば二階にも住めるようになるだろう。貴族の住処としては、まぁ及第点だ。 ご飯は・・・給仕に運んでもらえばいいか・・・いやそれ以前にまずトイレを・・・ ルイズの妄想が加速し思考が一巡しようとしたとき、 ヴォン ヴォン ヴォン カッ! 「きゃっ!」 まばゆい光が辺りを包み込んだ。その光が消えるとそこには、 「・・・あれ?」 鉄塔は消えうせ足元には一枚の円盤が落ちていた。 次の日学園は大騒ぎになった。 当然だろう、あの土くれのフーケをやすやすと学内に侵入さえあまつさえ宝物庫を叩き壊されたのだから。 だがそれは一人の英雄によって阻止された。言わずもがな彼女、ルイズ・フランソワーズ~中略~ヴァリエールの手によって。 フーケは近くの森で上半身が地面に刺さった状態で衛兵に発見された。 あの爆発でよく生き残れたものだとルイズは感心した。ギャグって素敵ね。 「ミス・ヴァリエール、良くぞフーケより破壊の杖を死守してくれた」 「いえ、オールド・オスマン。残念ですが破壊の杖は・・・」 破壊の杖はフーケのゴーレムと一緒に消し飛んでしまった。 当然と言えば当然だろう。フーケが生きていることのほうが奇跡なのだから。 「よいよい。フーケに杖を盗まれなかった、このことが重要なのじゃ。貴族の面子と宝物庫の宝一つ。 どっちが重要かは火を見るより明らかじゃ」 「ミス・ヴァリエール、あなたには精錬勲章の申請を行うことにしました。あ、もちろん 使い魔の再召喚もすぐに行えるように手配しています。建物が直るまでもう少し待ってください」 「・・・・・・・・・・・・・」 そうだ。彼女の召喚した使い魔はあれ以来消えてなくなった、銀色の円盤を残して。 「ちょっと! ちょっとあんたどこいったの?答えなさいよ! ねえ!」 「ご主人様に黙って消えちゃうなんて許されると思ってるの? 使い魔のくせに!」 しかしその呼びかけに答えが返ってくることはなかった。 最初から最後まで鉄塔は無言を貫き通し、そしてクールに去っていった。 「はぁ・・・・・・」 それゆえに彼女は精錬勲章の話を聞いてもあまり嬉しくなかった。 無論一生鳥籠の中よりは絶対今の状況がましなのは事実だが。 あーあ、せっかくあいつとなんとかやっていけそうになるかなと思ったのにな。 ルイズはひとりごちた。 銀色の円盤の正体はは結局何なのかわからなかった。それは光に当てると虹色の輝きを発する不思議な円盤だった。 円盤の裏にはなにやら文字が書き込まれてあったがトリスティンで使われている文字でないらしく、読むことは出来なかった。 ガラクタ好きのミスタ・コルベールは早速目をつけこの円盤が何なのかを研究に取り掛かった。 しかし、彼の知識をもってしてもこの円盤がなんなのかをついに解明することはできなかった。 「いやいや、解明できなかったとは失礼じゃぞい。確かにこの円盤の正体はわからなかったが裏側に書いてあった 文字はほれ、解読できたぞ」 「! なんと書いてあるのですか?」 「うむ、この文字はトリスティンはおろか、ゲルマニア、アルビオン、どの国の言葉でもない。 しかし東方から伝えられたと言う書物に同じ文字が使われておった。 この左側の五文字は「SUPER」、右側の三文字は「FLY」と読むらしいのじゃ」 「SUPER・・・FLY・・・スーパーフライ?」 「うむ、書物どおりに読み解くと『素晴らしき大空』という意味らしい」 「素晴らしき・・・大空ですか」 それがあんたの名前なの? その問いかけには無論、円盤は答えなかった。 結局円盤は破壊の杖の代わりに宝物庫に収められる事になった。 トリスティン魔法学園を救った英雄の使い魔、そのなれの果てとして。 2ヵ月後 「それではミス・ヴァリエール前へ」 「はい」 待ちに待った再召喚の儀式の日。 私の心は嫌が応にも高まった。 今度こそちゃんとした使い魔を。あいつなんかより愛想がよくて働いてくれて・・・そしてクールでかっこいい使い魔を! 「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに…答えなさいッ!!」 ・・・・この後彼女はトリスティン魔法学園の地下一円に広がる大迷宮を呼び出してしまうことになるのだが、 それはまた別のお話。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6039.html
前ページ/ゼロの使い/次ページ 瓦礫一つ、動くもの一つ無い、ニューカッスル城跡地に三体の鉄像が立ち尽くしていた。 しばらくすると、鉄像が徐々に元の姿に戻っていった。 「驚きましたね。」 「ああ、まさかワルドが自爆するとは・・・」 「そうじゃなくて、あれほどの大爆発の中で生き残った事に驚いたんですよ。」 あの時、マホカンタでは間に合わぬと判断したメディルが鋼鉄変化呪文・アストロンを唱えたお陰だった。 後、0.1秒判断が遅ければマホカンタを使用しているメディルはともかく、他の二人は城の者と運命を共にしたであろう。 「あれは自爆ではない・・・恐らく何者かに爆破させられたのだろう。」 「では、ワルドの他に文と私の命を狙う刺客がいたと?」 「そう考えるのが妥当だろう。傭兵や山賊の一件と言い、奴一人で全てをやったとは思えぬ。」 「とにかく、ここを離れましょう。その刺客が確認に来るかもしれません。」 「さっきも言ったが、僕はここで死ぬ。だから君たちは・・・」 ウェールズは台詞を言い終わることができなかった。 背後から突き出された槍に、心臓を貫かれ、断末魔すらあげる事の出来ぬまま即死したからだ。 「念の為来てみれば・・・道連れにすら出来ぬとは、つくづく役に立たぬ男だ・・・」 槍の主が、得物を死体から引き抜く。そいつは傭兵と山賊を雇ったあの髑髏の騎乗兵だった。 すかさず、メディルが五指爆炎弾を見舞うが、華麗な槍捌きによって、全て弾かれた。 「いきなり、メラゾーマ5発とは随分な挨拶じゃないか。」 「貴様が、もう一人の刺客か。」 「いかにも。呪いのかかった金貨で傭兵と山賊をけしかけたのはこの私だ。」 「よくも、皇太子を・・・!!」 ルイズが失敗魔法を放とうとするのを、メディルが制す。 「止せ。お前の適う相手ではない。」 メディルは無意識のうちに悟った。間違いなくこいつはワルドより格上。 1体1ならともかく、主を守りながら勝てるかどうかは五分五分だった。 「そうそう。私はたださっき吹っ飛んだ役立たずの尻拭いに来ただけなんだ。そしてそれはもう済んだ。 私が君たちと戦う理由は無い。」 「文はどうする?」 「さっき、上層部から連絡があってねぇ。もう文は要らぬと仰りだ。」 「ほう。」 「まあ、私自身が戦う理由は無い・・・だけだがね。」 言われて、メディルはようやく気づいた。いつの間にか周囲が紫色の霧に覆われ、そこから骸の兵士や 中身の無い血まみれの甲冑の群れが這い出してきていることに。 「我が名は死神君主・グレートライドン。冥土の土産に、覚えておいてくれたまえ・・・」 それだけ言い残して、グレートライドンの姿は消えた。 「どうするメディル?」 「この霧、恐らくこの近くで冥界の入り口が開いたのだろう。」 「それって・・・」 「恐らくこの亡者どもは無限に湧いて出るはず。相手にするだけ無駄だ。」 「じゃあ・・・」 「答えは一つ。ルーラ!」 しかし、不思議な力でかき消された。 「やはりそう甘くは無いか。・・・なんてな。」 メディルは手近な魔物にマホカンタをかけた。 「ルイズ、皇太子の死体と私の服の裾を掴め、早く!!」 「わ、わかった。」 言われるがままにするルイズ。 「生憎、着地がうまく行くかどうかは運次第だ。バシルーラ!!」 先程の魔物にかけたバシルーラが、跳ね返ってくる。 その結果、三人はニューカッスル城跡を脱出することに成功したのだが。 「この後はどうするの!!?」 「柔らかい場所か、海上か、その辺飛んでる船の上に落ちることを祈るしかない。ルーラはまだ発動できないんだ。」 「いやあああああああああああ!!!」ルイズの絶叫がアルビオン領空に木霊した。 ルイズ達が一生に一度しかしないであろう、スカイダイビングをしている頃、 アルビオン大陸軍港施設・ロサイスの一室に司祭姿の細い男が玉座に座っていた。 「閣下。」 馬に乗った死神君主が、その男の元へやってきた。 「君か。皇太子はどうした。」 「心臓を一突きに。他2名は取り逃がしましたが・・・」 「冥府の入り口まで開いておきながら・・・か?」 「あのメディルと言う男・・・かなりの切れ者のようで・・・」 「そうか。それにしても、子爵で作った花火は美しかったな。遠くからでも良く見えたよ。」 「皇太子一人吹き飛ばせない、完全な娯楽専用の花火でしたがね。」 「まあ、あれだけ綺麗ならあのお方も満足なさるだろう。それより・・・」 「分かっております。その準備を兼ねて、この世とあの世を繋げたのですから。」 「楽しみだな。トリステインが血と炎に染まる日が。」 「全く持ってその通りで。制圧の暁には閣下はまず何をなさるおつもりで?」 「・・・トリステインにはそれは美しい姫がいるという。ぜひ一度食したいと思っていたのだ。」 「相変わらずですね。百人もの美女を食べておきながら・・・」 ルイズ達は幸運にも、トリステイン国近海に不時着(落下直前、メディルが硬化呪文スクルトを連発し衝撃を和らげた)した。 彼曰く、岩場などの硬い場所ではアストロンを使う予定だったとの事。 事ここに至って、ようやくルーラが使用可能となり、ルイズ達は海水と海藻にまみれたまま、 死体を引っさげて姫に謁見と言う、トリステイン始まって以来の暴挙を成し遂げた。 死体を見せ、事の仔細を説明すると、姫は壊れたかのように号泣し、天もまた、惜しみない涙を流した。 1時間ほど泣いただろうか。ようやく涙の収まったアンリエッタが言った。 「ごめんなさい・・・つい取り乱してしまって・・・手紙奪還の件、有難うございます。 褒美にそなたが望むがままの地位を与えましょう。皇太子の遺体はわが国で手厚く葬ることに・・・」 「とんでもない。私はただ、友人の頼みを聞いたに過ぎません。」 「僭越ながら、姫様に申し上げたい義がございます。」 「何でしょう。」 「姫様はゲルマニアに嫁ぐべきではありません。」 「何故ですか?」 「最愛の男が目の前にいるのに、何故ですか?はないんじゃないか、アンリエッタ。」 ルイズとアンリエッタ、メディル以外は聞き覚えの無い声に、その場にいる者は皆振り向き、目を見開いた。 確かに死んだはずのウェールズ皇太子が立って喋れば誰でもそうしたであろう。 「どどど、どういう事!!?」 「どうもこうも無い。私の魔法で生き返らせたのだ。」 「だって、あれは・・・」 「一部を除き人は無理。確かに私はそう言った。しかし、幸運にもウェールズはその一部だったのだ。」 「一部の人間ってどういう定義で決まるの?」 「黄泉の国から舞い戻るほどの強い意志、または神や精霊などの何らかの助力。 どちらかを持ち合わせた者のみは蘇生が可能だ。」 「でも、いつの間に・・・もっと早く復活させたって・・・」 「愛しの姫の前に来れば、皇太子の死の淵から生還しようとする意志は強くなるだろうし、 敵には皇太子が死んだと思ってもらったほうが好都合だ。 そう判断し、王室へ戻り次第蘇生を行うはずだったのだが、姫が泣き出したお陰で、 タイミングを逃し、30分待っても泣き止む気配が無いので、復活させたが、 皆姫に気を取られていて気が付かなかった。で、今ここに至るわけだ。」 「ミスタ・メディル、その術で、我が王党派の者達の復活を依頼したいのだが・・・」 「残念だがそれは無理だ。あの爆発で全員、跡形も無く消滅してしまったし。時間も経ちすぎた。 灰や消し炭となった者、死後一時間以上経った人間はいかに私とて救えない。前述の助力を持つ者は時間に関係なく死体と意志さえあれば蘇生出来るが、 残念ながら、あの城の者達にそういう物は感じられなかった。 あの城の者達の毛髪でも肉片でもいいから、死体の一部があれば姫が泣き止む前に蘇生出来たかもしれぬのだが・・・」 「そうか・・・やはり叶わぬ願いだったか・・・」 「でも、良かったですね。姫様。」 「ええ・・・でも・・・」 「なりませぬぞ、姫!」 突如口を挟んだのは民から鳥の骨と呼ばれているマザリーニ枢機卿であった。 「一通の手紙でさえ、危うく国を危機に貶める所だったのに、事もあろうに・・・」 「この場の全員が口を閉ざし、皇太子は外部から見えぬ所で・・・ たとえば地下牢や隠し部屋で生活していただく。これならばどうと言うことはあるまい。」 「ききき、貴様。一国の姫に、不倫しろとでも言うつもりか!!?」 「敵から身を隠すためとはいえ、地下牢は勘弁してもらいたいな。」 「不倫しろといった覚えは無いし、さほど長い時間隠れていろという訳でもない。」 「どういう事?」 「間もなく、レコン・キスタが攻め込んでくるだろう。そもそも政略結婚の発端は奴らを倒すため、 同盟を結ぶしかなかったから。逆に言えば、奴らを倒せば晴れて堂々と結婚できると言うわけだ。」 「そんな簡単に倒せるわけが・・・」 「私なら倒せる。否、倒して見せる。」 「枢機卿殿、彼は緻密な策を用い、ワルド子爵を死闘の末、打ち負かしたのです。」 「他にも城一つ吹き飛ばす爆発から守る術を使ったり、凄まじい嵐を吹き飛ばしたり・・・ 正に彼の実力は桁外れです。国一つと戦わせても決して引けをとらぬはずです。」 「マザリーニ。私からも頼みます。私の友人とその使い魔を信じてやってはくれませぬか?」 使い魔、公爵の娘、皇太子、そして主君の眼差しに流石の枢機卿も折れた。 「では即刻、軍議に移るとしましょう。」とウェールズが切り出す。 「そうですな。敵の兵力は?」とマザリーニ。 「少なくとも5万。しかし、トリステイン侵攻の際はさらに多くの兵を率いてくるでしょう。」 「我が国の兵では太刀打ちできぬ。メディル殿に頼るしかないか・・・」 「ルイズ、ミスタ・メディル。ちょっと・・・」 二人は君主に言われるがままに、一冊の書の前に来た。 「これは始祖の祈祷書。指輪を嵌めた特定の者のみ、読めると言われています。メディル、あなたのルーンは始祖ブリミルの使い魔の物。 すなわちルイズ、あなたは始祖の使い魔の後継者を呼び出したと言えるのです。」 「なるほど。そのルイズならその書を読めるかも知れぬと。」 「はい。ミスタ・メディルの力を疑うわけではありませんが、保険は多いに越したことはありません。 あわよくば、この書にはこの戦を左右することが記されているかもしれないのです。」 「わかりました。」 返事と共に、書を手に取り、ゆっくりと読み上げるルイズ。その手には水のルビーが嵌められていた。 現段階で祈祷書から得られた情報はルイズが失われた虚無の使い手であり、彼女の爆発は失敗ではなく 虚無の初歩の術・爆発によるものであったこと。 そしてルイズは初歩の魔法『爆発』を覚えた。 「それはさておき、この度女王陛下のお耳に入れておきたいことが。」 「何ですか?」 「実は―」 「何と、そのような。」 「従わぬようなら国家反逆罪で処刑すればいいでしょう。」 「しかし、それは・・・」 「私も黙ってやるつもりでしたが、姫様の仰った通り、準備は多いに越したことはありません。」 「・・・分かりました。後ほど部隊を派遣します。」 「さて、これでお前と私はこの国の命運を左右する存在となったわけだ。」 「そんな・・・」事の重大さに、流石のルイズも腰が引けているようだ。 「人間とは死ぬ気になれば、誰かの為ならば、我ら魔族にも勝ることがある・・・認めたくは無いがな・・・」 その時ルイズは、使い魔の仮面の中に切なげな表情を見た気がした。 「ごめんなさい・・・」 「・・・謝る事は無い。お前が魔王様を殺したわけではないし、そもそも先に手を出したのは我らだ。 予想外の結果に終わったとは言え、戦と言うものの真理だと割り切っている。」 以前の自分では到底考えられぬ言葉に、彼は少しだけ自分の変化を自覚した。 ―ここへ来てまだ、数日しか経っていないと言うのに、随分といろんな目にあい、丸くなったものだ。我ながら。 前ページ/ゼロの使い/次ページ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/876.html
「ふんふんふーん♪」 食堂で食後の紅茶を楽しむ少女、ゼロのルイズはご機嫌だった。 今日のデザートは彼女の好きなクックベリーパイなのだ! なにやら食堂の一角が騒がしくなっている気もするが、彼女にとって今は誰にも 邪魔されたくない至高の時間なのである。 使い魔がそっちの方に行ったような気もしたが、当然無視した。 「まったく、あの馬鹿ったら…」 食堂で食後の紅茶を楽しむ少女、香水のモンモランシーは先日の事を思い出して 不機嫌になっていた。 「ギーシュ、ポケットから壜が落ちたぞ」 「おお!その香水はモンモランシーのものじゃないか!」 「つまりギーシュ、お前はモンモランシーと付き合っている。そうだな?」 「ち、違う!彼女の名誉の為に…ケ、ケティこれはその… ヒィ!も、モンモランシー!?違う、違うんだ!」 「ヘイ!ケティ、マスク狩りの時間だ!」 「OKモンモランシー!」 「クロス!」「ボンバー!」 「ウギャー!キン○マ―ン!」 「すまないギーシュ!僕が壜を拾わなければ…」 「いいんだ…それより、誰か僕の顔を見て笑っていやしないか?」 「誰にも…誰にも笑わせはしない…」 「ありがとう…マルコメミソ」 「マリコルヌ!風上のマリコルヌだよ!?」 つまりは、付き合ってる男に二股かけられたのである。 気位の高い彼女には、とてもとても許容しがたい出来事であった。 気位が高くなくても許容できない話だと思うが。 それでも謝られると許したくなってくるのが、余計に腹が立ってくるというかなんというか。 「どうぞ」 そんなことを考えていると、メイドがデザートを机に持ってくる。 当然貴族である彼女が『ありがとう』等と、平民に一々礼を言うわけも無く、 配った彼女を見ようともしないでクックベリーパイを口に運ぶ。 「…ちょっと、そこの貴方」 「え、私ですか?」 ケーキを配ったメイドが、貴族に呼び止められた事に当惑して立ち止まる。 「これ…どういう事?」 シエスタはこれ以上ないというぐらい脅えていた。 目の前の貴族、学生といえど魔法を操り、平民である自分にとって絶対的な存在が 自分に怒りをぶつけているのである。 「申し訳ございません!どうか、どうかお許しください!」 体の震えが止まらない。 「お許しください、ですって? 貴族である私の口に、平民である貴方の髪の毛を入れておいてお許しください?」 「お願いします、どうかお許しを!」 涙が溢れてくる。 平民の自分が貴族に粗相をして唯ですむはずが無い。 周りを見ても、他のメイドは見てみぬフリをし、貴族は何事かと一度は見るものの、 平民が貴族から罰を受けているとわかれば、あとは特に関心をしめさない。 助けなど望むべくも無いのだ。 シエスタにとって不幸だったのは、モンモランシーの機嫌が悪かった事だ。 そうでなければ怒りこそすれ、基本的に野蛮な事を嫌う彼女が『お仕置き』を する事もなかっただろう。 「覚悟はいいかしら?」 魔法の杖を取り出し、残酷に告げる。 「どうか…」 脅えるメイドに、嗜虐心をそそられたモンモランシーが杖を振ると、 メイドの頭上から水が降り注いだ。 「あら、似合ってるじゃない?」 ずぶ濡れになった姿を見て、にっこりと微笑むモンモランシーの姿に、 シエスタは更なる恐怖を覚える。この程度で済むはずが無いのだ。 「あぁ……ぁ……」 「さあ、次は…」 魔法を繰り出そうと杖を振り上げた瞬間、誰かがその腕を掴んだ。 「やめないか!」 育郎が食堂での騒ぎに気付き、駆け寄って見た物は、杖を振り上げる女生徒の前で、 先日世話になったシエスタがずぶ濡れになって震える姿だった。 「な、何よ貴方!?平民が気安く貴族にさわらないでよ!」 女性が抗議の声をあげるが、無視して育郎が尋ねる。 「君は何をやっているんだ!?」 「ハァ?この子の持ってきたデザートにね、髪の毛が入ってたのよ。 粗相をしたメイドにお仕置きして何が悪いのよ?」 「な!?そんな事で…」 「さっさと離しなさいよ!」 モンモランシーが、呆然とする育郎の腕を振り払おうとするが、 掴まれた腕はまったく動かない。 「彼女に謝るんだ」 静かに、だが強い意志を持って育郎の口から出た言葉を、モンモランシーは 鼻で笑って拒否する。 「謝る?何で貴族の私が平民に謝らなきゃいけないの? それに悪いのはこの子の方じゃない」 「君が怒るのもわからないわけじゃない…でもこれはやりすぎだ!」 「な、なによ…」 なんだなんだと、周りの生徒が2人のやり取りに気付く。 「おい、平民が何やってるんだ!」 「あれは…ゼロのルイズの使い魔じゃないか?」 「主人が主人なら使い魔も使い魔だな…」 周りの生徒が騒ぎ出した事により、少し弱気になったモンモランシーが勢いを取り戻す。 「さあ、早く手をはなしなさい!」 しかし育郎は手をはなそうとはせず、モンモランシーを見据える。 「彼女に謝るんだ…」 な…なんなのこいつ!? 生徒達に囲まれても、まったく物怖じせずに自分を見る育郎に、モンモランシーは 恐怖とまではいかないが、言いようのない不安を感じていた。その時、 「君!今すぐその汚い手を、僕の愛するモンモランシーからはなすんだ! さもなくば、このギーシュ・ド・グラモンが相手になってやろう!」 ギーシュは先日の事を謝る為に、愛するモンモランシーを探していた。 ポケットには今月の小遣いの大半をはたいて買った指輪が入っている。 「これを精一杯の愛の言葉と共に渡せば、彼女もきっと許してくれるに違いないさ」 彼は女の子が好きで、特にかわいい女の子が好きで、さらに女好きの家系という 環境で育ち、あとちょっと頭が弱かったりするため、つい二股なんてしてしまったが、 それでもなんのかんの言って、モンモランシーが一番好きなのである。 「モンモランシーならまだ食堂にいたわよ」 彼女の友人の言葉に従って食堂に行って見れば、なんとモンモランシーが平民、 ゼロのルイズが呼び出した使い魔に凄まれているではないか! 当然の如く、彼は愛するモンモランシーを助ける、というよりは相手が平民なので、 どちらかというと彼女にいい格好を見せる為に、前に出たのであった。 「ああ、ギーシュ!」 そんな思惑も見事に的中したようで、不安になっていた彼女が元気を取り戻す。 「聞こえなかったのか?手をはなすんだ…」 彼なりの凄みを効かせて育郎に薔薇の形をした杖を向ける。 「ほ、ほら早くはなしなさいよ。痛いじゃないのよ!」 「あ、すまない」 やっと手をはなした育郎を見て、モンモランシーは先程の不安を思い出し、怒りに震えた。 この平民にどんな罰を与えてやろうか? 平民が貴族に向かって生意気な目を向けてきたのだ… そうだ!ギーシュのゴーレムを使って痛めつけてやろう! 「まったく、貴方にも躾が必要なようね、ギーシュ!」 「ああ、任せてくれたまえ、モンモランシー…」 「とにかく、シエスタさんに謝るんだ」 「そう、このメイドにあやまって」 「ふっ、何がなんだかよくわかんないけど…すまないね、君」 「は、はぁ…」 「………って違うわよ!ギーシュ、貴方も何言うとおりにしてるの!?」 「え、でも君が謝れって?」 「貴族の僕たちが、何故平民なんかに頭を下げなきゃいけないんだ?」 事の経緯を聞いたギーシュがやれやれと首を振る。 「そうよ!大体平民の貴方が私に気安く触れるなんて…」 「そうだ、僕の愛しいモンモランシーになんてことをするんだ? だいたい、そのメイドが悪いんだろう?」 「…だからと言って、ここまでする事は無いだろう」 育郎が呆然とするシエスタを快方する。 うーん、なんだか変なことになってきたぞ? ギーシュの予定では、今頃は格好よく現れた自分がこの平民を叩きのめし、 モンモランシーからお礼のキスでも貰っているはずなのである。 それがこの平民と来たら訳のわからない事を言って、予定とは違う方向に 話が向かっている。 そういえば何で僕がメイドに頭を下げてるんだ?思い出したら腹が立ってきた。 モンモランシーも機嫌が悪くなってるし…よし、ここで一つ良いとこを見せよう! 「モンモランシー…彼の言うとおり謝ってあげてもいいんじゃないか?」 「な、何を言ってるのよギーシュ!」 先日の一撃で頭のどこかが壊れてしまったのかと、驚きながらギーシュを見る。 「ただし、僕に勝ったらだ………『決闘』だよ!!」 オオーッ!と周りから歓声が上がる。 「『決闘』?」 「そうだよ、正々堂々戦い、負けたほうが勝った方のいう事を聞く。どうだい?」 「そんな!?」 おどろく育郎を、脅えているととったギーシュは、調子に乗ってさらに続けた 「貴族から『決闘』を申し込まれたんだ、まさか断るは言わないよな? いや、所詮『ゼロのルイズ』の使い魔…主人同様出来損ないなら、 臆病風に吹かれてもしかたあるまい…」 その言葉に周りの生徒達から笑いが起こる。 「…わかった、受けよう」 「そんな!?育郎さん駄目です!」 育郎が女生徒を止めた時、シエスタの目には彼がおとぎ話の勇者の如く映った。 物語のなかから出てきた英雄が自分を救いにきてくれたのかと。 しかし、時が立つにつれ怖くなってきた。育郎はただの平民なのだ、 それが貴族と『決闘』だなんて…自分のせいで育郎が殺されてしまうかも知れない、 そう思うと先程より強い恐怖が襲ってくる。 「イクローさん、相手はメイジなんですよ!?殺されちゃいます!」 「殺される…だって!?」 驚いた育郎の顔を見ると胸の中が罪悪感でいっぱいになる。 もっとも、育郎が驚いたのは、生命の危険を感じたからではないのだが。 「僕はヴェストリの広場で待っている…逃げるなよ?」 ギーシュがそう言ってモンモランシーと一緒に去っていく。 「私が…私が悪いんです…だからイクローさんがこんな事を…」 ついには泣き出してしまうシエスタ。 「いいんだ…大丈夫だから」 「何が大丈夫なのよ!」 いつの間にか現れたルイズが育郎を怒鳴りつける。 「あんたどういうつもりなのよ、貴族と『決闘』だなんて!? ちょっと馬鹿力だからって調子に乗らないでよ…ほら、一緒に謝ってあげるから」 「それは出来ない…」 「なんでよ!?いい、メイジに平民は絶対に勝てないの! 心配しなくても、誰もあんたを臆病者なんて言わないわよ…」 「…違う」 「な、何が違うのよ…」 育郎にとって臆病者と呼ばれることなど、どうという事は無かった。 シエスタの事もあったが、逃げればルイズも馬鹿にされてしまう、 それが彼に『決闘』を受ける決心をさせたのだ。 「シエスタさん、彼の言っていた広場はどこですか?」 「駄目!?駄目です!」 涙を流しながら必死で止めようとするシエスタをなだめながら、 育郎は近くにいた生徒に広場の場所を聞く。 「何やってるのよ!?やめなさいって言ってるでしょ、ご主人様の命令なのよ!?」 「…それはできない」 「………もう知らない!ギーシュの馬鹿にボコボコにされればいいのよ!!」 走り去るルイズの後姿を見送り、シエスタを他のメイドに任せてから、 育郎は広場に向かった。 果たして、僕はあの力を使わずにすむのか? そう考えながら… 「何か俺忘れられてねーか?いらない子認定されてね!?」 そのころデルフリンガーは言いようの無い不安を感じ、思考がネガティブになっていた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2169.html
その日、朝の肌寒さのせいか、ルイズは早くから目を覚ましてしまった。 ルイズは腕から茨を伸ばして窓を閉じつつ、布団を茨でかけなおす。 一通り用事が終わると、茨はその場でフッ…と消えた。 ルイズにしか見ることのできない『茨の冠』は、文字通りルイズの手足となっていた。 ルイズが使い魔を召喚した日、誰にもその存在が確認できないことから、皆がルイズを馬鹿にした。 それだけならまだしも、コルベール先生ですらルイズを疑ったのだ。 だが、『私にしか見えない茨の冠を被ったら、私の腕から私にしか見えない茨が生えました』なんて言えるものだろうか。 って言うか、言った、力説した。 最終的に、オールド・オスマンが直接ルイズの腕を確かめて、やっとルイズが使い魔を召喚したのだと結論づけられた。 確認の方法は簡単で、水桶の中に砂を敷き詰め、茨をそこに這わせただけだった。 それをオールド・オスマンが触れて確認し、ルイズは落第を免れたのだが…困ったのはその後。 ルイズの腕から生える透明な茨は、視認がほぼ不可能であり、言わば悪用し放題なのだ。「まぁ~、ヴァリエール家の娘が悪用するはずはないじゃろうなぁ~」 と、ルイズのプライドを刺激して、悪用しないよう警告したが、それも苦肉の柵。 オールド・オスマンは、ディティクトマジックでも認識できないルイズの使い魔に、頭を悩ませていた。 そしてルイズ自身も頭を悩ませていた。 この使い魔のせいで、ルイズはある人物に付き纏われることになったのだ。 「ヴァリエール、いるー?」 コンコン、とノックの音が響くが、ルイズは気づかない。 「ちょっと、ヴァリエールー?」 ルイズの部屋をノックしていたのはキュルケだった。 本来は禁止されている『アンロック』の魔法で鍵を開けると、ルイズの部屋にずかずかと乗り込み、ルイズの布団を引っぺがした。 「ふえっ、らり?」(え、なに?) 「まだ寝てるの?朝食の時間になるわよ」 「ふわ…って、ツェルプストー、なんで人の部屋に勝手に入ってるのよ」 「あら、あんたを起こしてあげたんじゃない、感謝してほしいぐらいよ」 キュルケがルイズの手を掴むと、おもむろにルイズの手を頬にすりよせる、俗に言う頬ずりって奴だ。 「ちょちょちょちょちょちょっと!なにしてんの!」 「あら、つれないわねえ…ね、あの触手、ちょっとだけ出してよ」 「イヤよ!触手じゃなくて茨よ!い・ば・ら!」 「何よもう、触った感じじゃ、太さといい固さといい…何よりも何本もあるなんてのが素晴らしいじゃない!」 「とっとと出て行け色ボケ女ぁ!」 ルイズが枕を投げ、続いて腕から伸びる茨を使って手当たり次第に部屋の中のものを投げる。 たまらずキュルケが退散し、廊下を走って逃げていった。 ルイズは部屋で、朝から息を切らせてしまい、疲れている様子。 「…ハァ、ハァ…、なんでこの茨、妙に太くて棘が丸っこいのよ…これじゃまるで(検閲)じゃない…」 (※アニメ版です) キュルケに茨の形状を知られて以来、毎朝毎朝こんな調子だった。 「それに、こいつは触手じゃなくて『ハーミット・パープル』なんだから…もう」 ルイズは愚痴を言いつつ服を着替え、食堂へと足を進めた。 朝食を終えて授業の時間、コルベール先生の授業は独特で、火の魔法講義と言うよりは、火の利用法講義だった。 火単体の能力より、火と水、火と土、火と風…火を媒介とした利用法を考案し、発表している。 火の魔法に自信を持っているキュルケは、それが不満らしいが、火が生活のあらゆる面で活用されているという話には喜びを見せていた。 タバサという生徒は少し特殊で、攻撃や攪乱に役立ちそうなものに関心を寄せている。 彼女はいつも本ばかりを読んでいる上に、キュルケの友達ということもあって、なかなか人が寄りつかない。 ルイズも本来なら、彼女のことなど気にも留めていなかっただろう。 だが、彼女には、ルイズを共感させる何かがあった。 最初は偶然だった。 ルイズのことを「魔法成功率ゼロのルイズ」と馬鹿にしたマリコルヌの首を、ちょっとだけハーミット・パープルで締めてやろうと思ったのだ。 マリコルヌに気づかれぬよう、首と頭にハーミット・パープルを這わせると、ルイズの頭に何かが伝わってきた。 『ミス・ロングビル…ボンテージ着てたらどんな感じだろう…』 「はあ?」 突拍子もない思考に、ルイズは思わず呆れた声を出してしまった。 「ミス・ヴァリエール、どうしましたか?」 「あ、いえ、なんでもありません」 授業を担当している教師、ミスタ・コルベールに注意され、ルイズは慌てた。 しばらく待ち、再度ハーミット・パープルでマリコルヌの頭に触れると、また同じように声のような何かが伝わってきた。 『あのメイド、おっぱい大きかったなあ』 「………」 思わず、ルイズは惚けた顔をしてマリコルヌの方を見てしまう。 マリコルヌがルイズの視線に気づいたので、慌ててルイズは正面を向いた。 正面を向きつつもハーミット・パープルは解除せず、マリコルヌの思考を聞く。 『なんだろ…もしかしてヴァリエールの奴、俺に気があるのかな!?でもあんなゼロの乳じゃな…』 とりあえずマリコルヌの首を一瞬で締め上げてから、ハーミット・パープルの『能力』を他でも確かめようと、違う生徒達の頭にも這わせてみた。 その結果、ハーミット・パープルは『人間の思考を読める』ということが解った。 ついでに、ルイズは意外なことまで知ってしまい、一日の授業が終わった後で自己嫌悪に陥ってしまった。 キュルケは、ルイズを馬鹿にするとき、軽い気持ちで馬鹿にしているが、心配するときは本気で心配している。 言うなれば、裏表がなく正直な奴だった。 ただ自分に言い寄ってくる男に対しては、ものすごい軽い気持ちで接しているようだ。 次に教室では目立たないタバサという少女の思考も読んでみた。 まずタバサというのは偽名、本来ならシャルロットと名乗りガリアの王女様になるところだったが、叔父の策略で父は殺され母は自分の身代わりとなって毒の犠牲に。 しかも母は、タバサを危険な任務に行かせるために、生かされている状態…つまり人質だった。 トリステイン魔法学院には、身分を隠して生活するため、また毒の解毒法を探すために図書室を利用しているのだとか。 他にも何人もの生徒の心を読んでみたが、ルイズはタバサ以上の苦しみを見つけられなかった。 ただ一人匹敵すると言えば、コルベール先生だろうか。 彼は昔、任務とはいえ一つの村の人間をすべて焼き殺し、その贖罪として火を平和的に利用するための研究をしているらしい。 ご丁寧なことに、殺した人の数はしっかり記憶していた。 そんな重たい思考を探ってしまい、ルイズはは自己嫌悪に陥ってしまったのだ。 「みんな、苦しんでるんのね…」 ベッドに寝そべり、天井を見上げつつルイズが呟く。 「ゼロって呼ばれてる私だけど、家族がみんな無事だし、ちい姉さまも病気がちだけど、生きてる」 思い出すのは、タバサ…シャルロットの思考。 「私より辛い思いしている人なんて、沢山居るんだ…」 ルイズは姉の姿を思い出す。 ちいねえさま「カトレア」は、魔法こそ優秀だが身体が弱く、ルイズのように外を飛び回ることも出来なかった。 タバサの母は心を病み、人形を娘だと思いこんでいる。 その身に負っている症状の違いこそあるものの、明日からタバサと同じように図書館に通ってみようと思うルイズだった。 図書館にて、ルイズはまた一つ別の発見をした。 トリステイン魔法学院の図書室『フェニアのライブラリー』の蔵書数はものすごく、案内図を見ても迷ってしまう。 案内図を見て、人体を治療する魔法薬について書かれた本を探そうとしたが、それだけでも1000を超えている。 姉の身体を治療する薬についても調べたいが、ここはタバサを優先しようとした。 「精神を治す魔法薬って、どの本なのかしら…もう、多すぎて解らないわよ」 片っ端から読むには多すぎる、どれか一つに絞りたい。 ルイズがそう考えた途端、右手から飛び出たハーミット・パープルが、しゅるしゅると伸びていった。 「?」 ハーミット・パープルの伸びた先には、本棚の案内図があった。 よく見ると、ハーミット・パープルは『エルフ』の棚の『上から二段目』の『右端』を指している。 「なによ、こんな高いの、レビテーションが使えないと取りに行けないじゃない」 ルイズが愚痴る。 「って、よく考えたらハーミット・パープルで取ればいいのよね…ちゃんと取れるかしら?」 しゅるしゅるとルイズにしか聞こえない音を立てて、ハーミット・パープルが本を取ってくる。 よく見るとその本は大判で、ルイズが持つには少し大きいように思えたが、不思議なことにハーミット・パープルが持つとほとんど重さを感じなかった。 「…便利ね」 これがハーミット・パープルが持つ能力の一つ、『探知』だった。 ハーミット・パープルが持ってきた本は、かなり古ぼけており、エルフの伝承について書かれている本だった。 おとぎ話のような書き方がされており、資料的価値は非常に薄いように思えたが、目次のある部分に驚くべき記述があった。 『精霊魔法』の項目を見ていくと『呪い』という中項目があり、更にその中に『生ける屍』と書かれていたのだ。 そのページを開くと、古い文字でびっしりと毒薬について書かれていた。 古い始祖ブリミルの伝承本で使われる文字と同一だったので、ルイズはかろうじて読むことができたが、難しい文字のため、ついつい小声で音読してしまった。 「エルフ…用いる魔法薬は、水の秘薬が頭脳に停滞し、精神を混乱状態で安定させる……」 難しい文字を読むため、いつになく本に集中していたルイズは、背後を通りかかった人物の気配に気づかない。 「この毒は、意識を朦朧とさせるだけでなく、認識をすり替える…人形を我が子だと思いこむ母、オークを美しい女性だと思いこむあわれな男…など、後世では呪いなどとも呼ばれる……」 「見せて」 「うきゃっ!?」 ルイズは背後から聞こえてきた声に驚き、おもわず叫び声を上げてしまった。 振り向くと、そこにはタバサがいた。 タバサはルイズが読んでいた本をのぞき込み、指でなぞりつつ内容を確かめていく。 ルイズは椅子に座ったままだ。 鬼気迫る雰囲気でページをめくるタバサに声をかけようと思ったが、怖くて無理っぽい。 本を机に置き直して、タバサが呟く。 「…始祖ブリミルの直径第一子時代のエルフに関する本、ブリミル降臨以前の精霊同士の関連図がある本」 「え?」 「なんでもない」 ルイズは思う。 もしかして、タバサは母親を助ける手段を思いついたのではないか? それか、具体的な手がかりを見つけようとしているのではないか? 「本は返す」 そう言って立ち去ろうとするタバサを、ルイズが呼び止めた。 「待って、古代ルーン文字に関する本と…始祖ブリミルの降臨以前の、ええと…そうそう、精霊の本よね、ちょっと待って」 ルイズが右手を上げて、小声で呟く。 「……ハーミット・パープル、言ったとおりの本よ、探してきなさい!」 右手から伸びた茨が図書館中をはい回り、本を一冊一冊確かめていく。 その間、ルイズの頭にはものすごい情報が流れ込んできた。 図書館にある本のタイトルや主旨が頭の中に流れ込んでくるのだ。 ルイズの意識が、精神力の尽きたメイジが無理矢理魔法を行使するかのように朦朧としてきた頃、ハーミット・パープルがいくつかの本をルイズの元へと届けた。 「…これが、多分、あなたの読みたがっ…て…る…本……」 バタン、と音を立てて、ルイズは机に突っ伏してしまった。 ルイズを心配したタバサが、ルイズの顔をのぞき込むと、ルイズはよだれを垂らして寝ていた。 ルイズの持ってきた本は、まさしくタバサの探し求めたものであり、そこには母に使われた毒と、その解毒方法を解読するには十分だった。 「一個借り」 タバサは、もう一人の友人にしたように、その不器用な言葉で感謝を表した。 なお、その翌日、ルイズは二日の謹慎を食らい、自室で自習に励んでいた。 『フェニアのライブラリー』には教師しか閲覧を許されない書棚がある。 ハーミット・パープルは、そこから本を持ち出してしまったのだ。 「もう、閲覧禁止の棚から持ってくるなんて、もうちょっと気を利かせてよね!」 自分の腕から生える茨に文句を言う。 しかし、その表情はどこか嬉しそうだった。 ハーミット・パープルは実体化、半実体化ができる。 これを利用すれば『アンロック』を使わずに鍵を開けることができ、しかも、壁を突き抜けてその向こう側を探すという驚くべきことまでやってのけるのだ。 自分の腕から生えた使い魔が、驚くべき能力を持っているとわかり、ルイズはかつてない程に満足していた。 もう一つは、タバサの母を治療する糸口が見つかったという事。 ルイズにとって、苦しんでいる身内が救われるのは、我が事のように嬉しいのだ。 左腕からハーミット・パープルを出現させると、ルイズはそのうち一本を右手に持って、話しかける。 「ね、これからもよろしくね、ハーミット・パープル」 すると、ハーミット・パープルがルイズの机からペンを取り、紙に文字を書いていった。 「何?何を書いたの?」 『ハッピー うれぴー よろぴくねー!』 意外とファンキーな奴じゃない。 と、ルイズは思った。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1668.html
蒼いドールと翠のドールが深い闇へと落ちていく。 その先には、突然現れた光る鏡のようなもの。 鏡の中の鏡。それに蒼いドールは飲み込まれていく。 ゼロの使い魔~緑と蒼の使い魔~ [第一章 ゼロの使い魔] 第一話 召喚 その日、ルイズは召喚の儀を行い、毎度お馴染みの爆発が起こった。 爆発したのでルイズは失敗したのだと思い即座にもう一度行う。他の誰にも気付かれないように素早くもう一度。そしてもう一度爆発する。 こうなると周りの生徒達は、ルイズが失敗したと確信し、誰だってそうするようにからかっていた。 …しかし、煙の中には人影みたいなものがあったのだ。 ルイズは喜んで煙の中に駆け込んでいった。 「やった!成功したわ!」 生徒達は各々ざわめきだす。 「ば、馬鹿なッ!ルイズが成功した。そんなはずはッ!」「落ち着け。メイジはうろたえなィィィィ!!」「素数を数えて落ち着くんだ。」 ルイズが魔法を成功させるということは、普段失敗を目の当たりにしている生徒達にとって、とてつもない衝撃なのである。 そんな生徒達を無視し、ルイズは己が召喚したものに近づき呪文を唱える。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」 と。 そして接吻をしようとした。 だが、よく見ると二体いるのだ。もちろん召喚されたものが。 一方、召喚された蒼いドール、ショートカットでいやらしい帽子を被っているボーイッシュ、つまるところは蒼星石である…は、召喚された際に通常の状態に戻っていたのである。 ローザミスティカは失っているのに動いている。ルイズに召喚されるにあたっての効能であろうか。まさにファンタジーやメルヘンの世界なのだ。 そして煙の中で、自分が抱きついている緑色がぼんやりと見える。 此処が異世界であると気付いてはいないのだが、緑色、翠星石が一緒であると言うことに、正常に戻った蒼星石はギュッと強く抱きなおす。 (なんだか硬いなぁ…。) そう思い、よく見てみると大きい。男性一人分の大きさだ。しかも何だか飛蝗みたいだ。 蒼星石は驚いて離れようとするが、石に躓いて尻餅をついてしまう。 「あの…抱きついたりして、ごめんなさい。」 少しばかり恥じながら、申し訳なさそうに蒼星石は謝った。 ルイズはその光景を見ていた。 口付けをしようとしたら、二体いたのだ。暫し戸惑っていると蒼色の方が飛びのいて、尻餅をつき、謝っている。 蒼いほうはどう見ても小さい子である。しかし、緑色のほうは何だか強そうな亜人だ。 ルイズは心の中でガッツポーズをした。 その頃には煙も晴れて、無事成功したかと心配して、コルベールがやってきた。 コルベールは二体召喚されたという前例のない事態に驚き、とりあえず両方とも契約させるべきかな…と思い、ルイズに契約を二体ともするように促した。 言われたことに従ってルイズは契約を済ませようとする。 まずは練習がてらに蒼い小さい方に口付けをした。蒼い方は何だか戸惑っているようだった。 (こっちはあんまり役にたたなそうね。身の回りの世話でもやってもらおうかしら。) 「あぁぁぁぁ…あうぅぅ…うぅぅ…」 蒼いほうがルーンを刻まれるにあたって起こる熱に、悲鳴をあげていた。勿論我慢しようと心がけているのだが。 次は緑色の亜人だ。蒼星石を相手にせず、ルイズは緑色に近づく。その緑色と契約するのが楽しみで、蒼星石はアウトオブ眼中である。 ここで少しばかり時間は前後する。 緑色の亜人、ご存知我らの矢車の兄貴は、影山の亡骸と供に白夜の世界に向かおうとしていた。 その途中、目の前に謎の鏡のようなものが現れる。 ワームの類かと思い、矢車はゼクターを装着し、変身する。 …CHANGE KICK HOPPER!! 電子音が響く。白夜の世界に向かうのを邪魔するヤツは倒す。 その勢いで蹴りを繰り出すキックホッパー。しかし輝きに飲み込まれてしまった。 そして辿りついたこの世界。気付いたら小さい子に抱きつかれてて、そんでもって謝られる。 次にピンク髪の女の子が小さい子に急にキスをするという光景に。そこで害はないと思ったのか、変身を解く。 驚いたのはルイズだった。さっきまで緑色の亜人だったのが、黒いロングコートを着たただの平民に変わってしまったからだ。 暫し考え、きっと風の先住魔法か何かだろうと思い、ルイズは更に喜び、最高にハイってヤツになる。 そうしてその流れに乗ったまま接吻をする。ルイズはルンルンである。 (さっきは子供、今度は亜人だからファースト・キスにはカウントされないわ!) ズキュゥゥゥゥゥゥン!! (遂にやったわよ!本当に凄い当たりくじ、これで少しは見返してやれるわ。) 当然ルーンが刻まれることによって起きる熱に苦しむ。 「それはルーンが刻まれているだけよ。すぐに終わるわ。」 蒼星石のときにはかけなかった言葉をかける。 痛みが納まり、ルイズのほうを一体何なんだと見る矢車。それに対してなんともないという風に見返して尋ねる。 「あなたの名前は?」 矢車は流れがよくわからなく、面倒だったがとりあえず答えておいた。これぞルーンの洗脳効果である! 「………矢車、矢車想だ。…どうせ俺なんて……。」 to be continued…
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1824.html
職員や生徒の間で勅使が亡くなった、というニュースが流れていたが、その日は大多数の生徒にとっていつもの平和な朝だった。 もちろん、1人の少女と使い魔の間でも。 「……で、あの『ぷろてくたー』ってのはなんなの?」 「俺の世界では、身に纏う防具だったが…名づけた相手にとっては比喩だろう。俺の体の管から水蒸気を出し、それをウズ状にして 俺の周りに纏わせる。そうすれば光が屈折して俺に当たらない、故に姿が見えにくくなる。まあ、元々の目的は透明化ではないがな」 「あんたの風って便利ねー。異世界の亜人ってこんなんばかりだとしたら…恐ろしすぎるわね」 ワムウはそうでもない、と否定をする。 「我々はもう4人、いや2人しか残っていない。あちらでは亜人などと言う言い方はしていなかったがためになにを指しているか 詳しくはわからんが俺の世界で高等生命に足る知性があるのは人間と吸血鬼、屍食鬼くらいだった。俺の知っている限りではな」 「我々、ってことはあんたみたく風を操るのがあと1人いたの?」 「元々は4人居たのだが、2人は戦死した」 ルイズは黙る。 ワムウは語りだす。 「我々は一人一人能力が違う。一人はサンタナ、奴には大した能力も知性もなかった。もう一人はエシディシ様だ。あのお方は我々の中で 最も勤勉で、人間どもの戦略を必死に学んでいたな。二〇〇〇年ぶりの目覚めだというのに『戦争論』だの『海軍戦略』読んでいてなにが 楽しいか私には理解できなかったがな。あとは少々、気難しいというかなんというか…そして、エシディシ様は熱を操る流法『怪焔王』を 使っていた。俺の能力よりも使いやすく、どんな状況でもあの方ははほぼ落ち着いていた…ほぼだがな」 「次はカーズ様だ。我々の世界で吸血鬼を生み出す『石仮面』を作り上げるほどの知能の持ち主であった。正直な話、俺が求める『戦士像』 とは違っていたが、それでも偉大な方であった、と俺は思う。カーズ様は……もうあうこともないだろうしお前に話しても構わないだろうな、 カーズ様の流法は『光』。輝彩滑刀の流法といって骨を硬質化してエッジの部分を絶え間なく動かすことによって『チェーンソー』のように 切れ味を増し、どんな堅い物質であろうとも切り裂く。俺の肉体でも一瞬で切り裂かれるかもしれんな」 ルイズは、この目の前の化け物のような働きをした亜人の肉体を切り裂く武器があるのかと驚き息を呑んだ。『チェーンソー』とはなにかはよくわからなかったが。 「そして…仲間ではないが…というか我々の敵である人間、俺を破った人間の話だ」 ワムウを一人で倒せる人間の話、と聞いてルイズは今まで以上に緊張する。 「名はジョセフ…波紋戦士…正真正銘人間の青年だ。」 「ねえワムウ、あんたの話にたまにでてきたけど…波紋ってなに?」 ワムウは少し考えたのち答える。 「波紋とは…俺には原理はよくわからんが…吸血鬼、屍食鬼、そして我々の天敵だ。我々一族は普通の生命が例えば蹴りをはなって 来たとしよう。我々はその蹴りを、足ごと吸収して食える。したがって武器なしで打撃を与えることは普通はできないし、 武器があったとしても我々に身体能力で敵う生命など生まれてこのかたみたことがない。これは自慢でも過信でもない。 我々の誇りと自負だ。しかし、『波紋』は我々の弱点である。人間がこれを纏えば、我々にとってはどんな鎧よりも恐ろしい鎧となる。 波紋を纏った蹴りを吸収しようとすれば内部から組織が破壊され、波紋が通っている油を塗った鉄球を打ち込まれれば 屈強な我々一族の肉体をも貫き、立ち上がることすらできなくなる」 ワムウは続ける。 「そして俺を破った戦士、ジョセフはその波紋の使い手の一人であった。波紋の強さ自体は今まで戦ってきた戦士の中では中の上 程度であった、が、自分の弱ささえも武器にし、自分の本質を最大限に生かしていた。これは前にもいったな。『したたかさ』と 『高潔さ』を両立できる人間…戦士を俺は尊敬している。俺にとってそういった者は友であり尊敬するもの。俺は俺を倒した ジョセフや、俺に向かってきた戦士たちを尊敬している」 「あんたのいう『戦士』って、ただ強いだけってことじゃないの?」 「強者こそは真理であるし、敬意をも払う。しかし、俺が目指す、尊敬している友人たちは強いだけではなかった」 「話が長くなったな、もうそろそろ食事の時間だろう」 ワムウは話を終え、外へと出て行った。 * * * 朝の食堂。 「お、おはようモンモンラシー!今日も素敵だね!」 キザなセリフを吐きながらも、なぜか声の裏返っているギーシュ。 「そんなに慌てて、またあんたなにかやましいことでもあるのね?」 「ぜ、ぜぜぜぜぜぜんぜんないよ!ハハハハ!」 「ギーシュ様…最低!」 入り口に立っている女の子が泣きながら外に走り出した。 「あの子は後輩のケティね……あんた、後輩にも手を出して…」 「ははは、ちょっと待ってくれ、平和的に話し合いで…」 「どうして欲しいのあんたは?色々と嫌がらせしてみる?あんたのファン減らすためには…そうね、色々とバラしてみる?」 「や、やめてください…」 「ってことはやっぱりまだやましいことがあるのね?オラオラオラァー裁くのは私の水魔法だァーーッ!」 今日も食堂は平和であった。 ルイズ達が入ってくるとやや雰囲気が強張ったが、決闘騒ぎはもう過去の物となり、影にさえ気にしていれば大丈夫とされたため 大多数には特に目立った変化もなかった。キュルケはまだ怯えている少数派の一員だったが。 「あら、おはようシエスタ」 「おはようございます、ミス・ヴァリエール」 「前は言いそびれちゃったけれども、ルイズでいいわよ。そんな畏まらないで」 「そ、そんな恐れ多いです……そういえば前に話しましたモット伯の話を聞きました?」 ルイズはビクリとふるえる。ワムウは平然と食事を続ける。 (落ち着くのよルイズ……落ち着いて自然数を数えるんだ…自然数はなにかがある数字…私と胸に力を与えてくれる…) 「い、いえ聞いてないわ」 「それが、行方不明になったらしくて、私が勤める話もご破算になって…それでここの仕事に復帰できたんです」 「そ、そうよかったじゃない」 「ミス・ヴァリエール、なんだか目が虚ろですけれど風邪でもおひきになられましたか?」 「べ、別になんでもないわ、大丈夫よ。気にしないで」 「そうですか、では仕事に戻らせてもらいます」 シエスタが席から離れていき、ルイズはため息をついた。 (なんとか、うまくいったようね…死体も残ってないから「行方不明」になってるんでしょうけど…冷静に考えるとすごい恐ろしいわね) どうにか一息つき、シエスタの働きぶりを眺める。 (しかしよく働くわねー。メイドだけじゃなくウエイターや会計までやってるわ) 今日は虚無の曜日の前の平日であり、出かけている人も少なく、食堂は非常に混んでいた。 そして、その日はウエイターが数人休んでおり、ただでさえ多いシエスタの仕事は増していた。 そのため、いつものシエスタならば起こりえないミスを犯してしまったのだ。 「あっ!」 シエスタが持っていた飲み物が手から落ち、横にいた女生徒の頭にかかる。 「す、すみません!ミス・ヴィリエ!」 シエスタは膝を土につけ、必死で謝る。が、 「おのれ…よくも私の髪に飲み物をッ!」 ヴィリエと呼ばれた女性はその程度では許す気にはなれないらしく、杖を懐から出し、振り上げる。 (ああ、私を魔法で殴る気だッ!) しかし、杖は振られなかった。 いつのまにか後ろに立っていたルイズが杖を抑えたのだ。 「やめなさいよ、大人気ないわ。仮にも貴族であるなら程度をわきまえなさい」 「あら、『ゼロのルイズ』が貴族観について私に意見するの?」 相手の言にルイズは激昂しそうになるが、堪える。 「ええ、そうよミス・ヴィリエ。謝っているのにそれを認めずに杖を出すのがあなたの貴族観だっていうの?」 「ええそうよ、平民風情が多少謝ったところで許してたら私たち貴族の誇りは守れないの。私、残酷ですもの」 ルイズの眉が震える。 「じゃあ、どうすれば許すってのよ」 「どんなに魔法で痛めつけても、私の心は晴れないし許す気にもならないけど…それくらいの罰は受けてもらわないと、貴族としてね」 ルイズは一歩下がる。 そして、 目の前の少女を思いっきり殴った。 乾いた音が静かな食堂に響く。 倒れた状態でヴィリエは叫ぶ。 「おのれ…よくも私のハダに傷をッ!」 「や、やめてください!ミス・ヴァリエール!私が悪いのです!」 シエスタがルイズを止めようとする。 しかし、ルイズはそれを無視する。 「あんたがいくら私を侮辱しようとも構わないけれど…私の友人を侮辱するようなら!私はあんたを 許さないわ!貴族による決着のつけたたを私から教えてあげるわ、決闘よ!」 「決闘…ですって?貴族同士の決闘は許されていないわ」 「そんなのは関係ないわ…侮辱には『決闘』も許される!ヴェストリの広場で待ってるわよ」 ルイズは後ろを向き、出口へ向かう。 そして、一度振り向いて 「ただ、あんたがこの決闘の申し込みにも従わず、負けても従わないようなら、私はあんたに対して『貴族らしく』なんて考えないことにするわ」 そう呟いて食堂を出て行った。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/458.html
ゼロの究極生命体 序 第壱話 究極生命体 召還 第二話 究極な使い魔 誕生
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1946.html
「ははは、ルイズ、君の使い魔は恐ろしく強いね。スクウェアの僕ですら歯が立たなかったよ」 「…だから止めようとしたのに」 気絶し、数本骨折したワルドはすぐにルイズが呼びつけた水のメイジに治療され、事なき事を得た。 「ワムウも、任務中に味方を怪我させるなんて…あとでキツくいっておかないと」 「いやいや、僕が吹っかけた喧嘩なんだ。返り討ちにあった僕の自業自得さ」 ワルドはなんの恨みもないのか、爽やかに笑いかける。 「まだ出発まで一晩ある。これくらいの傷、全く影響しないさ」 その笑みの隙間からは白い歯が覗けた。 * * * 「仮面の男、で呼べばよかったわよね?」 「ああ、その通りだ。こんな重要なことを忘れるとはもう年かね?」 フーケは笑みを崩す。 「…わたしの、年が…なんだって?」 「認めたくないものだな!自分自身の、老い故の過ちというものを!」 「この私が『行き遅れ』みてぇーだとぉ!?」 フーケがガタンと立ち上がる。 「確かに聞いたぞこらあああッ!!」 「見せて貰おうか!土くれのフーケの性能とやらを!」 仮面の男も杖を抜く。 結局、数秒後にフーケが折れる。 「どうしたんだい、イラついて、あんたらしくないよ?」 「別になんでもないぞ行き遅れ」 ビキッ、とフーケの眉がつり上がるが、なんとか笑みを崩さない。 「わかったわ、なにも聞かないからぶん殴られる前にとっとと用件話しな」 「あの相棒、とは会ったな、どういった作戦を立てたんだ?」 「使い魔だけかと思ったらおまけまでついて来たって言うんでね、各個撃破することにしたわ。 二束三文で雇った傭兵どもで正面を襲う。そこであんたたちに裏口から逃げてもらう。 そうして残った奴らが前に集中している間に、予想外のところから仕掛ける。あいつの攻撃を 最初に食らった奴を始末する間に私が時間を稼いで、始末し終えたらあいつがそのまま強行突破。 残りの数人を戦闘不能にしている間にルイズとワルドが裏口から逃げてく寸法さ。あんた達の脱出は任せたからね」 ふむ、とワルドが頷く。 「なるほど、奴の能力なら妥当だろう。遠距離戦は向いてないが、背後から急襲をかければ俺くらいでなければ どうにもならん。脱出に関しては任せてくれたまえ、筋肉バカとガキどもくらい簡単に説得できる… ところで、最初に仕掛ける相手は誰なんだ?」 フーケは首を傾げる。 「さーね、そのとき一番近くにいる奴じゃないか?一々そこまで決めてないよ」 ワルドは身を乗り出す。 「ならば…先にあの使い魔をやれ、肉片すら残すなよ」 「…なにがあったかしらないけれど、あいつは頼まれなくても残すことはないさ」 * * * 出かけていったワルドを待つ酒場で待つ一行。 案の定二日酔いのギーシュは飲ませてもらえない。 「酒!飲まずにいられないんだあッ」 「アルビオンまで酒は送迎してくれないわよ」 ドアが開く。 ワルドが入ってくる。 「皆、いいニュースだ」 その言葉にワムウ以外の注目が集まる。 「足りない馬力を僕の魔法で補うということで、交渉が成立した。もっとも、貨物船だが贅沢は言っていられない。 皆、出発の支度をしろ!」 ワルドが声を張り上げた途端、銃声が轟いた。 「ヒャッハッハッ酒だ!女だ!」 「ヒャッハー!ここは通さねえぜ!」 「面倒だ、全員やっちまうぜ!」 貴族の宿「女神の杵柄」の客とは思えない風貌の連中が武器を入り口周辺で振り回している。 蜘蛛の子を散らすように客が逃げていくが、一行は逃げるに逃げられない。 腕はあまりよくないが、一応彼らの近くを銃弾が飛び交っていたからだ。 同じく、奥にいた店長も体を伏せ、震えている。 数人のモヒカンが武器をもってこちらへ向かってくる。 「おら、大人しく死にやがれ!」 しかしワムウは気にも咎めず歩き出す。 「あ?てめぇこのボウガンが目に入らねえのかァーーッ!」 モヒカンはワムウに向かって弓を発射する。 発射した、つもりだった。 「どうだァアアア、でっかい穴があいたぜえええッ!…な、なんでそんな平然としてるんだ… …なるほどうわははははははは は、これは俺の体でしたァぁぁぁいつのまにかァァァ!!」 発射しようとしたときには彼の腕はなかった。 発射したつもりになったときには彼の胴体は無かった。 話し終えたときには体も残っていなかった。 「参ったな、これでは出発できん」 ワルドが呟く。 「明らかに私たちを狙ってるわね、やっぱりあの物盗りも貴族派が一枚噛んでたのかしら」 ワルドはため息をつき、低い声で言う。 「諸君、すまないが、この目的地には僕とルイズさえ辿り着ければいい。君たちには…」 「囮」 続きをタバサが言う。 「そう、囮をお願いした。僕たちは裏口から出て、そのままアルビオンに出発する」 「ま、仕方ないわね。私たちは何をしにアルビオンに行くかすら知らないんだから」 決まりかけたころ、ワムウが声を出す。 「待て」 「なんだね、ワムウ君」 「その裏口から埠頭までほぼ一直線、敵の狙いは詳しくはわからないが、時間稼ぎならここより船や港を襲うなり 買収した方が確実だろう。つまり、敵の目的は時間稼ぎではなく俺たちの命ないしは身柄、所持品ということだ」 ワルドが眉をひそめる。 「なにがいいたい?急いでいるんだ、手短に頼むよ」 「ここを襲うと決めた以上、裏口にまで気を回さないということは無いだろう。それに、その裏口から埠頭までは 暗い倉庫街、暗殺にはもってこいだ。人間の目が4つでは到底足らんな。エシディシ様も言っていた、包囲した際には 一つだけ逃げ道を残し、そこを叩くとな。誰だってそうする、俺だってそうする」 「じゃあ、どうしろって言うんだね?」 苛ついたようにワルドが尋ねる。 「突破だ、俺が少々暴れればこの程度数分でケリがつく。暗殺されるのを防ぐには目が多いほうがいい。 戦力をここに集中させているなら、なおさらだ。戦力で勝っているのに決戦から逃げるのは間違いだろう」 「な…」 ワムウは有無を言わさず銃弾の雨と敵の森の中に突っ込んでいく。 銃弾が当たるものの、皮膚が弾き返し、射手をものの数秒で何人も食い尽くす。 「ひいいいッ!」 「あべしッ!」 「ヤッダバアアアアアッ!」 「もう一度…ぬくもりを…」 店内は阿鼻叫喚の様相を示す。 そして、二分後には、襲ってきた敵は一部しか残っていなかった。数ではなく、体積でだ。 たぶん数ヶ月は営業停止確実だろう。 「では、行くぞ」 行こうとしたワムウに、店主が感謝する。 「あ、ありがとうございます…この店は、祖父の代から受け継いでいて…」 ワムウは無視し、背中を見せ、店を出ようとする。 そのワムウに店主は礼をし、頭を下げる。 その瞬間、店主の頭が崩れ、ワムウを黄色い肉が襲った。 「この田吾作がァーーッ!多少心得があるらしいが、この『イエローテンパランス』に敵は無ァいいいッ!」 ワムウを黄色い肉が襲うと同時に、屋根が崩れ落ちる。 「落石注意報だよッ!」 岩石で穴だらけになった店をフーケのゴーレムが見下ろしていた。 To be continued.
https://w.atwiki.jp/zinc654/pages/54.html
ズンの使い魔とは ズンの使い魔とはOF(オコメファクトリー)から出版されたライトノベルである。略称は「ズン魔」。 作者はズンで、イラストは基本本家からパクっている。 zero.jpg ストーリー 平凡な高校生・汚染米人はある日突然、異世界コメトルニアに召喚されてしまう。彼をこの世界に召喚したのは、トリステイン魔法学院の生徒でありながら魔法の才能がまるで無い「汚染のルイズン」こと、ルイズン・フランソワーズン・ル・ザンク・ド・ラ・ヴァリエールだった。 失敗とはいえ、召喚の儀式によって呼び出された米人は、「使い魔」としてルイズンと契約のキスを交わす。すると、米人の左の頭が使い魔の証である契約で欠けた。こうして、ルイズンと「米」扱いされる米人との奇妙な同居生活と冒険が始まった。 登場人物 +... ルイズン・フランソワーズン・ル・ザンク・ド・ラ・ヴァリエール 本作のメインヒロイン。米色がかったブロンドの長髪と鳶色の瞳を持つ、オコメトール家の三女で65.4歳。身長65.4サント、スリーサイズは B65.4/W65.4/H65.4と小柄で細身のため、スタイルの良い同性に対してコンプレックスがあるが、細身にも関わらず腕っ節は強い。 コメステイン屈指の名門貴族であるオコメトール公爵家(始祖は王の庶子)に生まれ、コメステイン魔法学院に進学する。学院の進級時、使い魔召喚の儀式で地球人の米人を召喚してしまい、彼を使い魔とする羽目になった。「汚染のルイズン」の蔑称は、幼少の時から魔法に失敗し続けたため、魔法の才能が皆無であるとされたことから付けられた。だが魔法が使えなかったのは、四系統のメイジとは異なる系統の使い手だったせいであり、幾つかの事件によって「米のルビー」と「化学の教科書」を手にしたことから、「汚染」の魔法に目覚める。彼女の汚染は、コメリアの教皇ヴィットーリオによると“精神的苦痛”を司るもので、第 65.4巻時点で使える魔法は「爆発(エクスプローズン)」「汚染(ポリューション)」「妄想(デリュージョン)」「瞬間移動(ズンズーン!じゃあな!)」。強力な破壊力と威力を持つ一方、自分にダメージが来る。汚染に目覚めた後は、簡単な環境汚染はできるようになっている。 気持ち悪い外見とは裏腹に(?)、気位とプライドは天に昇るほど高い上、短気で爪噛むし鼻ほじるという厄介極まりない性格。また泣き虫という子供っぽい一面も見せる。出来の良い姉たちの存在や、魔法を使えないなどの理由から両親から全く期待されていなかったと思い込み、強いコンプレックスを抱いていた。そのため、他人に認められたいと思うあまり、物語開始当初は無茶をすることが多かった。第6巻では家族の反対を押し切ってムギビオン討伐の遠征軍に参加してもいる。しかし、その後は無茶をするのも貴族としてのプライドよりも仲間のためを理由にするようになりつつあり、第10巻ではズンリエッタに貴族の身分を返上し、コムギ王国へズンサを救出に向かった。第11巻でのコメステイン帰国後、ズンサを救出したことにより、ズンリエッタの義理の姉妹となり第2の王位継承権を得ている。 最初は米人のこともただの使い魔としか見ていなかったが、共に戦い続けて行く中で少しずつ惹かれていき、彼のことを1人の米として強く意識するようになっていく。ただし独占欲と嫉妬心が強いため、米人が自分を馬鹿にしたり、他の農薬と仲良くしたりするとキツイ罰を与えることから、米人には「こんな女と結婚したら大変だ」と思われている。現在では米人に依存している面が目立ち、米人に「自分がいなくなったら死んでしまうのではないか」と思われてしまうほどである。第13・14巻で、米人が母親からのメールに涙を流しているのを見て「米人のために何かしてあげたことがあっただろうか」という思いに駆られ、「汚染米の聖女」になることの対価に、ヴィットーリオに世界扉を開かせて米人を地球に帰すことを決意したが、結局米人は帰郷しなかった。第16巻で屋敷の地下室で密会した米人とズンリエッタを偶然目撃し、自分が消えればみんな幸せになれると思い、家出した。第65.4巻後半で米人と合流し、元素の兄弟の次男を雑魚扱いするほどになった。第65.4巻にてようやく自分の本当の気持ちに素直になる事を決め、米人と将来を決め、オコメノールにさえも真っ向から自分の気持ちをぶつけた。 好きな食べ物はクックベリーパイ。趣味は編み物だが、かなり下手。特技は米栽培。嫌いなものは麦。ズンリエッタの幼少時の遊び相手で、彼女が女王となった今でも友人として想われている。しかし、ルイズンはズンリエッタがいつも自分の人形を借りてはすぐに飽きるのを根に持っていたことが第17巻で明かされている。米人に「姫様は飽き性だからすぐに捨てられる」と言い、それを聞いて激怒したズンリエッタと殴り合い寸前の喧嘩になった(間に米人が割って入り、二人に殴られ蹴られた)。コメケとは顔を付き合わせれば憎まれ口を叩きあうが、陰湿な要素は無く、悪友とも言える関係である。 元ネタ ゼロの使い魔 公式サイト アニメ版 公式サイト